11/4(水)『唐版 風の又三郎』本読みWS 第1回 その②

昨日の続きです。

『唐版 風の又三郎』冒頭のト書きは、一見するとかなり詩的な記述で始まります。
でも、よく読むと、

・男装したヒロイン「エリカ」が死んだ恋人を求めて彷徨っていること
・死んだ恋人に出会うために地獄を探し、地獄は「耳」のかたちをしていること
・結果的に、代々木のテイタン(帝國探偵社という興信所)に当てをつけたこと

が、実に具体的に書かれています。
ちなみに、『ベンガルの虎』冒頭もこれは同様で、

・とにかく、生きていた頃を夢見る死者たちの物語であること
・池やトイレの「水」が死者たちが舞台に現れるための出入り口であること

が提示されています。当時の唐さんの手法は共通しています。
話を『唐版 風の又三郎』に戻すと、小学校のシーンに入ります。
ここで、元自衛隊空軍の教官「教授」が生徒たち相手に授業をしている。

「教授」は自衛隊をクビになり、今では興信所員に過ぎませんが、
あくまで自衛官としての誇りを忘れていないぞ!という気迫が伺えます。
生徒たちに「ヒコーキ」という言葉を習字させ、もっとも偉大な数として
「男色」を表す「2」という数字を叩き込みます。軍人は男同士の結びつきを
尊ぶものだ、という唐さんのシャレでもあります。
と、同時に、このシーン全体が、宮澤賢治『風の又三郎』のパロディです。

ここを覗く者がいて、これが先に紹介した男装のヒロイン「エリカ」です。
女人禁制の場所なので男装してきたのですが、女性であることがバレては
いけないために、彼女は咄嗟に「風の又三郎」を名乗ります。

一方、帝國探偵社の外では、「エリカ」を待つ「大学生」と「老婆」が
お腹を空かせています。彼らは、亡くなった「エリカ」の恋人
「高田三郎」の親族であり、遺族年金がもらえると聞いて、歩いて
代々木にやってきました。疲れ、お腹が空いています。

そこへ、帝國探偵社の職員で「教授」の部下たち、
元自衛隊員の「乱腐(らんぷ)」「珍腐(ちんぷ)」「淫腐(いんぷ)」が
現れて、「大学生」「老婆」をからかいます。
三人の元自衛官は「三腐人(さんぷじん)」と名乗り、自衛隊での活躍の
場を失い、興信所員生活に心が腐っていることが示されます。

・・・というシーンまでを読みました。

詩的なト書き、インパクトのある人物名、前提条件を説明しない物語進行、
という唐十郎スタイルがいっぱいの冒頭です。
それらを楽しみつつも、いかに早く、実際にはどんなキャラクターが
どんな物語を生きているのか、を掴み出すことが重要です。

一幕の中盤になると、そういったことが見えてきます。
次回は11/8(日)19:30からです。

※今日の写真は2021年秋の劇団唐ゼミ⭐︎より。撮影は伏見行介さん。